Project03. 西火力発電所

プロジェクトストーリー 蒸気供給構想も実現した西火力発電所3号機。 Project03. 西火力発電所

PROJECT 04
2兎も3兎も追うプロジェクト、林地残材バイオマス混焼発電実証事業。

森林で立木を伐採し搬出したあとに残る曲がった木・端コロ、枝葉、樹皮などが林地残材。
森林が荒れる原因にもなるし、大雨時に流れ出た残材はダムや海域でも多くの流木被害を引き起こす。
ただ、資源の目で見れば未利用の立派の森林資源の一つ。
これを発電燃料として有効活用できないだろうか、というのがこのプロジェクトの狙いだ。

亀井 洋介 コメント

企業の事業計画では収支がプラスになることが大前提ですが、林地残材の有効利用に関しては採算度外視で実施したのが印象的でした。ただ、水力発電を持つ当社にとって、山の荒廃は保水力の低下や流木の増加にもつながる懸案事項であったことも確かです。火力発電所の設備で林地残材を燃焼利用することで、山もきれいにすることができ、CO2も削減できるという一石二鳥で、地域にも大きく貢献できる事業となりました。今後は、このバイオマス混焼発電事業がうまく運営できるようにフォローするとともに、新しい事業計画にもチャレンジしていきたいと考えています。石炭灰の有効利用など、温めている計画もありますから。

亀井 洋介

住友共同電力株式会社
経営企画部亀井 洋介

火力発電が環境に貢献する。
採算面をクリアすれば面白い。

即座に「これは難しい」と亀井洋介(2001年入社)は答えた。上司から、林地残材を火力の燃料として受け入れ可能かどうかの検討を問われ、その採算性をはじいてみたときだ。「森林や住宅事業を展開しているグループ会社に聞くと、資源として扱ってもらえるならビジネスにもなるし山もきれいになる、とくる。しかし、普通のチップの方が安いし、石炭と比べればかなり高い燃料である。安定的に低価格の電気を供給するという電気事業者の常識からはかけ離れているんですね」それでもこれは経済産業省と林野庁(愛媛県)の補助がついた実証事業だし、将来性もあるから赤字覚悟でやってみてくれと言われて、担当することとなった。 「赤字でいいといわれて、はいそうですかとはいえない。なんとか黒字にする方法は無いか、やってやろうじゃないか、といった気持ちでしたね」 とりあえずコストをアップさせている要因を探る。たとえば、電力会社で木質燃料を使う場合は破砕しチップ化されたものをさらに粉末化したりペレット化したりするが、これをチップのまま使うことができればそれだけコストダウンとなる。テストしてみると、粉末にしなくても3%までなら混焼に問題ないことがわかる。

関わる人たちすべてにメリットがあるように!

「粉末化をやめるだけで、他社に比べてびっくりするぐらいのコストダウンになるんですよ。これは他社よりは少しマシになるなと、ちょっと希望めいたものが湧いてきましたね」林地残材の収集も切り出ししたばかりの生木ではなく、ある程度乾燥したものを収集する体制をつくる。それを破砕処理するグループ会社には、プロジェクト用に大型の破砕機を導入する。グループ会社のチップ事業にとっても効率アップでメリットは大きい。 さらにプロジェクトは、林地残材に加えて建築廃材の併用も取り入れた。建築廃材は処理費として収入が計算できるからだ。黒字化のためなら何でもやってみようというスタンスだ。2009年5月に事業化の検討を始めて、2カ月で枠組みづくり。社内のコンセンサスと承認を得て、2010年1月に着工。「発電設備は西3号機を使うのでそれでOK。あとはチップ化から貯蔵、受け入れ、搬送設備までをどうするかですが、機械メーカーと詰めると最短6カ月ほしいとのこと。じゃあ、7月稼動でいこうということに決めました。組織がコンパクトで意思決定が早い。住友共同電力だからできたことだと思います」

電力会社からも林業関係者からも
熱い注目が浴びせられる事業になった。

実証事業を開始して1年半ちょっと経過した。この20カ月は、試行錯誤の連続でもある。まず、湿った生木の大量のチップ化は日本でもほとんど例がない。破砕機は改良に改良を重ねて、1年で必要な処理能力が確保できるまでになった。その前提となる残材の収集も、半径30kmを中心とした効率的な収集運搬体制の構築で、天候に左右されがちな(たとえば雪が降ると収集できないなど)量確保をクリアした。「この事業を通じて、交流のネットワークがずいぶんと広がりましたね。林野庁とのコンタクトも多くなりましたし、森林組合などとの会合も定期的に実施しています。林業白書にこのバイオマス混焼発電が紹介されて、知名度も上がりましたしね」石炭混焼比2.5%とはいえ、年間では1万2500トンの残材を使う。林業関係者から発電利用が非常に注目されているのもそのためだ。林業関係者だけではない。本家の電力業界も、強い関心を持ってこの事業の行方を注目している。森林整備に貢献するし、資源の有効活用もできる。CO2の削減で環境にもやさしい。一石二鳥にも三鳥にもなりそうなこの事業、検証期間は2010年から4年間と定められている。 「今後は、再生可能エネルギーの固定買取制度も視野に入れて、事業を黒字化していきたいと考えています」

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